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シネマカルチャー扉アーカイヴス❘瀬々敬久監督×菅田将暉×小松菜奈『糸』|17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン|SKIN/スキン|コリーニ事件|2人のローマ教皇|ジョン・F・ドノヴァンの死と生|スキャンダル|リチャード・ジュエル❘CinemaCulture TOBIRA








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<今週の扉アーカイヴ 2020> ARCHIVE 2020



『おもかげ』 MADRE  2020年10月23日(金)からシネスイッチ銀座/YEBISU GARDEN CINEMAほか

■原題「MADRE」はスペイン語で母の意味。失われた息子の面影を求めてさまよう女性の話だが、その一途な思いはひとりの少年との出会いからふしぎな愛のものがたりへと昇華されてゆく。オスカー候補にもなった自作短編がまずあって、そこから長編へと発展させたのはスペインの新鋭ソロゴイェン監督。コンビを組むことの多いペーニャとの共同脚本。

■SYNOPSIS■ 離婚して独り身のエレナのもとに、元夫とともに旅行中の6歳のひとり息子から電話がかかってくる。パパがどこかに行って戻ってこない、変な男が近づいてくると。場所の手がかりなどを聞くも携帯のバッテリーが切れ、半狂乱状態で探しに向かうエレナ。10年後、フランス南西部の浜辺の町に彼女の姿があった。レストランで店長としても働くも、息子を失ってイカれてしまったスペイン人、と噂するものもいた。変人扱いのエレナだがきょうも若者たちの横顔を追っていると、息子イバンの面影のあるジャンに出会う。

■ONEPOINT
REVIEW■ 実在しロケも行われた海辺の小さな町ヴュー=ブコー=レ=バンがフランス南西部にあって、スペインと隣接していることを頭に入れておくと物語をより理解しやすい。その町にスペインから移り住み事件後10年暮らすエレナは、パリから家族ぐるみでバカンスにやって来ているジャンと出会う。多感な少年ジャンは美しいエレナに興味をいだき、一方のエレナには探し求めてきた息子の面影を宿す少年に触れてみたい抱きしめたいという思いがある。息子を想う母のものがたりであると同時に、これは危険で甘美なラブストーリーでもあった。(NORIKO YAMASHITA)          2020年10月20日 記

監督/共同脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン 共同脚本:イサベル・ペーニャ 
出演:マルタ・ニエト/ジュール・ポリエ/アレックス・ブレンデミュール/アンヌ・コンシニ/フレデリック・ピエロ  2019年/スペイン=フランス(129分) 配給:ハピネット 原題:MADRE  公式サイト:http://omokage-movie.jp/  ©Manolo Pavón




『ある画家の数奇な運命』 WERK OHNE AUTOR(NEVER LOOK AWAY) 2020年10月2日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか

■地元ドイツだけでなく世界的な現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒター。彼の数奇な運命に触発され、映画化に動いたのは『善き人のためのソナタ』で映画ファンの心をつかんだドナースマルク監督。真実と虚構をないまぜにした脚本も彼が書き下ろした。

■SYNOPSIS■ 1937年ナチス政権下のドイツ。「退廃芸術」が指弾され障がい者への迫害がまかり通るなか、クルト少年の叔母エリザベトも精神のバランスを崩し連行される。そこで「無価値な命」と烙印を押したのはナチス親衛隊の名誉隊員でもあるひとりの医者だった。第2次大戦終結後、敗戦国となったドイツは東西に分割、ソ連が管理する社会主義体制の東ドイツに暮らすクルトはドレスデンの美術学校に入学する。明るい一歩を踏み出したように見えたが、時代の変化に取り残された父が自殺。そんななか、叔母エリザベトの面影を思い出させるエリーと出会う。しかしじつは彼女の父は障がい者の命を率先して処分してきた医者のゼーバント。そんな数奇な運命をクルトは知る由もなかった。

■ONEPOINT
REVIEW■ 数奇な運命の真実を画家本人からじかに聞き出したリアル感の一方、ミステリーやドラマチックな部分を巧みに織り込みエンターテインメントを引き出してゆく。現代アート好きには見逃せないエピソードもいくつか出てくる。たとえば主人公が自分のスタイルを見出してゆく成功前夜のシーンは、重層的な意味を持たせてスリリングだ。またデュッセルドルフの美術学校でじっさいに教授だったというヨーゼフ・ボイスと思しき人物の登場や、映画で使われている絵画の多くをリヒターの弟子が描いたという裏話。さらにヘンデルをはじめクラウス・ノミが歌うパーセル、フランソワーズ・アルディなどなど、音楽的な隠し味もしずかに効いている。(NORIKO YAMASHITA)   2020年9月30日 記

監督/脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 出演:トム・シリング/セバスチャン・コッホ/パウラ・ベーア/オリヴァー・マスッチ/ザスキア・ローゼンダール 2018年ドイツ(189分) 配給:キノフィルムズ 原題:WERK OHNE AUTOR(NEVER LOOK AWAY)
公式サイト:https://www.neverlookaway-movie.jp/  ©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG /WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG



『メイキング・オブ・モータウン』  HITSVILLE:THE MAKING OF MOTOWN  2020年9月18日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか

■自動車の街、米ミシガン州デトロイトを拠点に世界を席巻し、創立60周年を迎えたレコードレーベル「モータウン」。ヒット曲づくりの秘密と破竹の勢いだった当時のようすを、創立者のベリー・ゴーディJr.と同社の副社長でもあった人気ミュージシャンのスモーキー・ロビンソンがみずから明かし語る。英BBCや広告業界などで腕を磨いてきたターナー兄弟監督による、テンポよく躍動感にあふれ、洗練された音楽ドキュメンタリーだ。

■SYNOPSIS■ 上昇志向が強かったベリー少年は新聞販売で稼ぎ方のコツを覚え、音楽好きだったこともあってジャズ専門のレコード店を開くが失敗。フォードの工場に勤めたのが大きな転機となる。閃いたのは自動車の組み立てラインをヒット曲づくりに取り入れるという斬新なアイデアだった。1959年、実家から借りた800ドルを元手に「タムラ」レコードを創業。世にいうタムラ・モータウンが誕生する。フォードスタイルを真似た徹底した品質管理のもと作詞作曲家、アーティスト、A&Rらを養成しヒット曲を連発。成功を収めてゆく。

■ONEPOINT
REVIEW■ ことし90歳と80歳。ゴーディJr.とスモーキーのふたりが健在なところがまず素晴らしい。ふたりの口から掛け合い漫才のようにポンポンと飛び出すびっくりエピソードの数々。スプリームスの一連のヒット曲をつくったホーランド=ドジャー=ホーランドらも登場するが、映画を観てわかるのはモータウンを生んだこの街が音楽の才能が集積した奇跡の街だったということ。その潜在能力を引き出したゴーディJr.が、黒人向けの新聞を白人にも売って成功したように、ソウルミュージックを洗練させて白人にも浸透させてゆくところがまたすごい。(NORIKO YAMASHITA)               2020年9月16日 記

監督:ベンジャミン・ターナー/ゲイブ・ターナー 出演:ベリー・ゴーディJr./スモーキー・ロビンソン/ホーランド=ドジャー=ホーランド マーサ・リーヴス/マーヴィン・ゲイ/テンプテーションズ/スプリームス/ジャクソンズ/スティーヴィー・ワンダー/ニール・ヤング/ジェイミー・フォックス 
2019年アメリカ=イギリス(112分) 配給:ショウゲート 公式サイト:http://makingofmotown.com/
原題:HITSVILLE:THE MAKING OF MOTOWN ©2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved.



『糸』   2020年8月21日(金)から全国東宝系

■めぐり逢いを歌った中島みゆきの「糸」。カラオケで歌われカバーされてきた人気曲をモチーフに、縦糸と横糸のように交差するひと組の男女の絆を描いたラブストーリー。平成という時代の一区切りを意識して書かれた林民夫のオリジナル脚本は、壮大で大河ドラマのよう。『64-ロクヨン』などの瀬々監督×人気の菅田×小松という顔合わせだ。

■SYNOPSIS■ 北海道で生まれ育った漣は13歳のときに寂し気な少女、葵と出会い強く意識する。葵は子ども食堂で食事をとるような孤独な子で、ある日、養父の虐待から逃れ家を出る。漣もあとを追いふたりは駆け落ちするが、すぐに警察に見つかり保護されてしまう。8年後、地元のチーズ工房で働く漣(菅田)が友人の結婚式で再会したのは、美しく成長した葵(小松)だった。軽くあいさつを交わすも、プレイボーイ風の男(斎藤)の高級車に乗り姿を消してしまう。別々の人生を歩みつづけるふたり。だがふたたびめぐり逢う日がやってくる。

■ONEPOINT REVIEW■ 漣と葵の地元、北海道あるいは本州あたりで物語が完結するかと思えば、話は葵の新天地であるシンガポールや彼女の恋人が雲隠れする沖縄にまで広がってゆく。ややてんこ盛りかとも思えるが、平成のバブルのなごり感や主人公ふたりの物理的心情的な距離感が描かれ、メロドラマ的なすれ違いも生じながら、スケール感のある物語はいつしか収束してゆく。  (NORIKO YAMASHITA)            2020年8月17日 記

監督:瀬々敬久 脚本:林民夫 出演:菅田将暉/小松菜奈/斎藤工/榮倉奈々/山本美月/高杉真宙/倍賞美津子/成田凌/二階堂ふみ/永島敏行/馬場ふみか/竹原ピストル/山口紗弥加/松重豊/田中美佐子 2020年日本(130分) 配給:東宝  公式サイト:https://ito-movie.jp/ ©2020映画『糸』製作委員会



『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』  2020年7月24日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか

■第二次大戦前夜のオーストリア。大自然で母とふたり暮らしの青年がはじめて世間に出て、そこで出会ったひとたちとの交流のなか成長してゆく。「ある一生」のジーターラーのベストセラー小説を映画化。昨年亡くなったガンツが実在の心理学者フロイトを演じている。

■SYNOPSIS■ 湖のほとりの大自然で母と暮らすフランツ。17歳のある日、経済的支援者が急死してウィーンのたばこ店に働きに出ることに。子ども時代が突然終わり、はじめてのひとり暮らし都会暮らしに不安を抱くが、店主のオットーは反骨のひとで仕事だけではなく幅広く青年を導いてゆく。そんな彼がフランツに紹介したのが心理学者のフロイト教授。臆することなく接する青年に教授は心を許し、恋の悩み相談にもつきあってくれる。だがやがてオーストリアはナチス・ドイツに統合され、戦争の足音が忍び寄ってくる。

■ONEPOINT REVIEW■ 架空のものがたりに実在の有名な心理学者をからませた意表を突く展開。夢判断でも知られるフロイトは青年に、見た夢を書き記しておきなさいとアドバイスする。神秘的な湖から始まるこのものがたり、青年の夢の世界も随所で幻想的に描かれ、映画全体に奥行きを与えている。 
(NORIKO YAMASHITA)                                                 2020年7月22日 記

監督/共同脚本:ニコラウス・ライトナー 共同脚本:クラウス・リヒター 原作/ローベルト・ジーターラー著「キオスク」 出演:ジーモン・モルツェ/ブルーノ・ガンツ/ヨハネス・クリシュ/エマ・ドログノヴァ/レジーナ・フリッチ/カロリーネ・アイヒホルン 2018年オーストリア=ドイツ(113分)
配給:キノフィルムズ 原題:DER TRAFIKANT(THE TOBACCONIST) 公式サイト:http://17wien.jp/ © 2018 epo-film, Glory Film




『SKIN/スキン』  2020年6月26日(金)から新宿シネマカリテほか 

■白人至上主義の夫婦に拾われ、みずからも差別主義者として組織のリーダー格となってゆく青年ブライオン。ひとりの女性との出会いが彼を目覚めさせ、さまざまな葛藤がはじまる。全身タトゥーの強面の主人公を演じるのは、デビュー作『リトル・ダンサー』での可憐な少年役がいまも印象に残るジェイミー・ベル。ナティーヴ監督の長編デビュー作。

■SYNOPSIS■ 町なかをリクルート中にレイシスト集団が目をとめたのは、所在なげに仲間たちと遊ぶブライオン。ピックアップされたか細い少年はやがて全身タトゥーの屈強な男となり、白人至上主義組織を率いる夫婦を支えてゆく。まるで親子のような関係。だがほんとうの愛を知るのは3人の幼い子どもを育てるシングルマザー、ジュリーとの出会いだった。差別主義を嫌う彼女との愛を貫くには、組織との決別しかなかった。

■ONEPOINT REVIEW■ ドキュメンタリーにもなったある男性の実話物語。全米中にはびこる憎悪の象徴、レイシスト集団の物語であり、入れたタトゥーが人生を決定づけ、そこからの脱却がいかに難しいかという話でもある。本編の習作ともいえる『SKIN 短編』は真逆の展開になっていて、刺青をとるのか入れるのか。視点を変えながらアメリカの闇である差別主義を等しく告発している。(NORIKO YAMASHITA) 2020年6月22日 記

監督/脚本:ガイ・ナティーヴ 出演:ジェイミー・ベル/ダニエル・マクドナルド/ダニエル・ヘンシュオール/ビル・キャンプ/マイク・コルスター/ヴェラ・ファーミガ  2019年アメリカ(118分) 配給:コピアポア・フィルム 原題:SKIN
公式サイト:http://skin-2020.com/ © 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.



『コリーニ事件』 2020年6月12日(金)からYEBISU GARDEN CINEMAほか   © 2019 Constantin Film Produktion GmbH

■ドイツ連邦議会で1968年に採択されたある改正法をめぐる人間ドラマ。起草者はナチスドイツ時代に特別法廷筆頭検事だった男で、そこに潜められた一文によりナチ犯罪人の多くが処罰を免れる結果となった。その不条理をミステリー仕立てで告発したサスペンス。原作は祖父がナチス高官だった出自を持ち、弁護士を経てベストラー作家となったシーラッハ。チュニジア系のムバレクとイタリアの大御所俳優フランコ・ネロという異色顔合わせも見どころだ。

■SYNOPSIS■ 高級ホテルのスイートルームでドイツ人富豪が射殺される。犯人は30年以上も模範市民としてドイツに暮らす外国人労働者のコリーニ(ネロ)。新米弁護士カスパー(ムバレク)が国選弁護人に任命されるが、殺されたのはトルコ人の母を持つ自分を、父親代わりになって支えてくれた恩人ハンスだった。私情を捨て職務を遂行するうちに、犯人が使った希少な銃と同じものを子どものころハンスの書斎で見た記憶がよみがえる。

■ONEPOINT REVIEW■法改正でさりげなく滑り込ませた一文が、結果的にナチスの犯罪人の多くを無罪放免することになったという事実。まさかのはじまりは、戦後裁かれることなく世のなかに散らばったナチス残党の存在にあった。それにしても法解釈の恐ろしさ。だから私たちは気をつけなくてはいけないのだ。
                                                 (NORIKO YAMASHITA)2020年5月26日 記

監督:マルコ・クロイツパイントナー 原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ 出演:エリアス・ムバレク/アレクサンドラ・マリア・ララ/ハイナー・ラウタ―バッハ/フランコ・ネロ 2019年ドイツ(123分) 配給:クロックワークス 英題:THE COLLINI CASE  公式サイト:http://collini-movie.com/



Netflix オリジナル映画 『2人のローマ教皇』  Netflixで配信中

■四角四面な性格で「教義の番犬」とまで言われたベネディクト前ローマ教皇と、自然体で「改革派」のフランシスコ現教皇。前代未聞の引退劇から新教皇誕生に至る知られざる「真実」を、2人のベテラン俳優で描いた人間ドラマ。監督は『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』の大御所メイレレス、脚本は『ボヘミアン・ラプソディ』のマッカーテン。

■SYNOPSIS■  2012年。カソリックの総本山はさまざまな汚点を抱え揺れていた。そんなバチカンから距離を置こうとベルゴリオは枢機卿の職を辞すために教皇に手紙を出すが一向に返事が来ない。しかしそれとはべつに1通の手紙が届き呼び出される。ふたりが本格的に言葉を交わすのはこれが初めてだった。開場前の静寂のシスティーナ礼拝堂でベルゴリオが、地元アルゼンチンの独裁政権時代、仲間を見捨てることになった後悔を教皇の前で懺悔すると、教皇もいまの自分には神の声が聞こえなくなっていると告白するのだった。 

■ONEPOINT REVIEW■ 進んで庶民のなかに分け入りサッカーにも熱狂するフランシスコ(ベルゴリオ)と、ひとり孤独に食事をしベールを脱ごうとしないベネディクト。対照的な新旧教皇をプライスとホプキンスという老練なふたりが演じている。だれに対しても自然体のベルゴリオを前にいつしか心を開いてゆくベネディクト。ここで描かれるのは、後継者と目する人物の人柄を教皇が見定めるそんな2日間でもある。          (NORIKO YAMASHITA)

監督:フェルナンド・メイレレス 脚本:アンソニー・マッカーテン 出演:アンソニー・ホプキンス/ジョナサン・プライス 
2019年英国=伊国=アルゼンチン=米国(125分) 原題:THE TWO POPES



『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』  2020年3月13日(金)から新宿ピカデリーほか

■十年前に謎の死を遂げたTVスターと売出し中の若手俳優。ふたりの接点が明かされるにつれて死の真相に迫りゆくミステリアスな人間ドラマ。仏語圏カナダ出身のドランが、共同脚本家の協力を得て書いた初めての英語作品。自身の実体験が物語の起点になっている。

■SYNOPSIS■ 本の出版を控える若手俳優ルパートの取材を頼まれ、硬派ジャーナリストのオードリーは気が重い。どうせ生意気な若造のつまらないインタビュー…。ところが本人に会い話を聞いていくうちに彼の話にのめり込んでゆく。それはちょうど十年前に謎の死を遂げた人気俳優、ジョン・F・ドノヴァンに関わる話だった。まだ少年だったルパートは、当時人気絶頂のさなかにいたジョンと文通を重ねていたのだった。 

■ONEPOINT REVIEW■ 幼いころ夢中だったL・ディカプリオに手紙を書いた実体験から、この映画は生まれたとドランは明かしている。加えてライフワークのように描いてきた母と息子の関係、その集大成でもあると。彼にとっては演劇臭から逃れられた初めての作品でもないだろうか。天才、天才と謳われてきたドランだが、観念的な表現が薄れ、過去作品にはなかった余裕さえ感じられる。美しいエンディングも…。                  (NORIKO YAMASHITA)

監督/原案/共同脚本:グザヴィエ・ドラン 共同脚本:ジェイコブ・ティアニー 作曲:ガブリエル・ヤレド 出演:キット・ハリントン/ナタリー・ポートマン/ジェイコブ・トレンブレイ/スーザン・サランドン/キャシー・ベイツ/タンディ・ニュートン/ルパート・ターナー/マイケル・ガンボン 
2018年カナダ=イギリス(123分) 配給:ファントム・フィルム/松竹 原題:THE DEATH AND LIFE of John F. Donovan 
公式サイト:http://phantom-film.com/donovan/   ©Lions Gate Entertainment Inc.



『スキャンダル』  2020年2月21日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか

■米ニュース専門チャンネルFOXニュースを舞台に、数十億円単位の訴訟にまで発展した一大セクハラ・スキャンダルを描く実話ドラマ。クセの強い3女優が共演し、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のジェイ・ローチ監督がメガホンをとった。セロンやキッドマンらの成りきり演技を支えたメイクアップのカズ・ヒロ(辻一弘)が2度目のアカデミー賞を受賞。

■SYNOPSIS■ 元ミスアメリカのグレッチェン・カールソン(キッドマン)や元弁護士のメーガン・ケリー(セロン)ら才色兼備の女性キャスターが競い合うFOXニュース。大統領候補トランプの女性蔑視発言を追求したケリーは彼からの執拗な言葉の暴力に苦しめられるが、彼の人気を確信した同チャンネルはトランプ側につく。一方、最高責任者ロジャー・エイルズ(リスゴー)の性的誘いを拒んだ途端に降格させられたカールソンは彼を告発することを決心する。そんなある日、新入りの野心家ポスピシル(ロビー)がエイルズに呼び出される。

■ONEPOINT REVIEW■ 映画界を震撼させた「#MeToo」騒動が映画プロデューサーのワインスタインVS女優たちなら、こちらはTV局のCEOと女性キャスター。同じような構図だが、真実を伝える使命を負うキャスターがミニスカートをはかせられ、性的関係を迫られるこちらのほうがより深刻かもしれない。エンターテインメントの映画ではあるけれど、こんなことがまかり通っている米国の恐ろしい一面を突きつけられる。               (Noriko Yamashita)

監督:ジェイ・ローチ 脚本:チャールズ・ランドルフ 出演:シャーリーズ・セロン/ニコール・キッドマン/マーゴット・ロビー/コニー・ブリットン/ジョン・リスゴー/ケイト・マッキノン/マルコム・マクダウェル 2019年アメリカ=カナダ(109分) 配給:ギャガ 原題:BOMBSHELL
公式サイト:https://gaga.ne.jp/scandal/ ©Lions Gate Entertainment Inc.


『リチャード・ジュエル』  2020年1月17日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか 

■1996年のアトランタ・オリンピックのさなかに起きた無差別爆破事件。その第一容疑者としてFBIからマークされ、マスコミのスクープによって犯人扱いされてゆく警備員のリチャード・ジュエル。イーストウッドの監督最新作は、彼に焦点を当て真相を追った実話物語。ジュエル役のハウザーはじめ弁護士役のロックウェル、母親役のベイツと役者がそろった。

■SYNOPSIS■ 警備の仕事を転々としているリチャード・ジュエルの夢は警察官になること。オタク気質がありクセは強いが、母親思いの優しい青年だ。ある日、オリンピック公園で行われたコンサートを警備中に爆発物を発見。死者2人を出したものの大惨事を免れたことからヒーロー扱いされる。ところが捜査中のFBIは彼がプロファイリングのサンプルにあまりにも当てはまることから第一容疑者としてマーク。それをかぎつけ真に受けた記者がスクープ記事を書き、一転ジュエルはマスコミに追いかけられバッシングの対象となる。

■ONEPOINT REVIEW■ 脚本の土台になったのは、米「ヴァニティ・フェア」誌に事件の翌年掲載された1本の取材記事だった。リチャード、母のボビ、弁護士のワトソンから話を聞いたのはアル・パチーノ主演の『インサイダー』(1999年)や、女性戦場記者を描いた『プライベート・ウォー』(2018年)の原作者として知られる女性ライターのマリー・ブレナー。事件当時のジュエル本人の生の声を聞けたことは貴重だった。(Noriko Yamashita)

監督:クリント・イーストウッド 原案:マリー・ブレナー 脚本:ビリー・レイ 出演:ポール・ウォルター・ハウザー/サム・ロックウェル/キャシー・ベイツ/ジョン・ハム/オリヴィア・ワイルド/二ナ・アリアンダ/イアン・ゴメス 2019年アメリカ(131分) 配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:RICHARD JEWELL  公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/richard-jewelljp/   
ⓒ2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC




『ダウントン・アビー』  2020年1月10日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか

■英国の貴族の館を舞台に2010年~15年まで6シーズンつづいた人気テレビドラマシリーズが映画になって戻ってきた。スタッフ/キャストはテレビ版とほぼ同じで、TV版「セックス・アンド・シティ」や同「ダウントン・アビー」(途中参加)の演出を手がけたマイケル・エングラーがメガホンをとっている。ドラマ終了時の1925年から数年を経て物語は始まる。
■イングランド北東部ヨークシャー、ダウントン村の田園にそびえ立つ貴族の館ダウントン・アビー。当主クローリ―伯爵と一族、彼らに仕える使用人が日々の暮らしを送るなか、ジョージ5世国王とメアリー王妃一行が訪れるというビッグニュースが舞い込む。長女メアリーは混乱を予想し元執事のカーソンに救援を求めるが、国王一行は身辺のことすべては自分たちで賄うと告げる。ダウントン・アビーの料理人ら使用人はそれを聞き意気消沈する。

■ONEPOINT Review■
ロバート・アルトマン監督『ゴスフォード・パーク』でオスカーの脚本賞を受賞したジュリアン・フェローズが立案し、脚本を書いたところから「ダウントン・アビー」のすべては始まった。彼自身男爵の称号を持つが、実在の壮麗な城で撮影が行われ時代考証も入念。主人公たちはじつは没落寸前の貴族という背景もある。続編が叶うなら、テレビ版で笑わせてもらったマギー・スミスVSシャーリー・マクレーンなどまだまだ観たい場面多数。           (N.Yamashita)
 
                                     
監督:マイケル・エングラー 出演:ヒュー・ボネヴィル/ジム・カーター/ミシェル・ドッカリ―/エリザベス・マクガヴァン/マギー・スミス/イメルダ・スタウントン/ペネロープ・ウィルトン 
2019年イギリス=アメリカ(122分) 配給:東宝東和 原題:DOWNTON ABBEY 公式サイト:https://downtonabbey-movie.jp/ 


 

<今週の扉アーカイヴ2019> ARCHIVE 2019

『ラスト・クリスマス』  2019年12月6日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか 

■クリスマスシーズンのロンドンを舞台にしたラブロマンス…。と見せかけて、じつは大きなどんでん返しが待っているファンタジックな物語。ワム!=ジョージ・マイケルの定番クリスマスソングを小道具に脚本を書いたのは、母親役で出演もしているエマ・トンプソン。監督は『シンプル・フェイバー」や女性版『ゴーストバスターズ』のポール・フェイグ。
■主人公ケイトの一家は旧ユーゴスラビアの内紛でロンドンに移住してきた移民家族。だがケイトは家には寄りつかず、友人の家や出会ったばかりの男性の家などを転々としながら自堕落な毎日を送っている。バイト中のクリスマスグッズの店でも仕事に身が入らず、失敗の連続。ある日、店の前で鳥を見上げている明るくさわやかな青年トムと出会う。

■ONEPOINT Review■
たわいのないラブコメディかと思えば思いのほか衝撃的な真相が待ち受けていて、この物語の評価は一気に変わる。しょうもない主人公の女の子がいとおしい存在となって、物語を最初からもういちど反芻することに。ひとりで観るよりもだれかと一緒に観て、そのファンタジーを語り合うにふさわしいクリスマスプレゼントな一作。                                                             (N.Yamashita)

監督:ポール・フェイグ 出演:エミリア・クラーク/ヘンリー・ゴールディング/ミシェル・ヨー/エマ・トンプソン 2019年イギリス(103分) 配給:パルコ/ユニバーサル映画 原題:LAST CHRISTMAS  公式サイト:https://lastchristmas-movie.jp/  © 2019 UNIVERSAL STUDIO



『LORO ローロ 欲望のイタリア』 2019年11月15日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか

■スキャンダルにまみれながらも政権トップの座に3期9年君臨したシルヴィオ・ベルルスコーニ元イタリア首相。その人となりの側面を、彼に取り入って成り上がろうとする若い男や、政界の裏側の謀略などを交差させて描いた人間ドラマ。『グレート・ビューティー/追憶のローマ』ほかの若き巨匠ソレンティーノ監督が脚本も手がけている。
■青年実業家のセルジョはローマ中のセクシーな女たちを集め、ベルルスコーニのヴィラ前でど派手なパーティーを連夜開催する。そのベルルスコーニはといえば、政権への返り咲きを虎視眈々と狙う一方で、失われつつある妻の愛を取り戻すことに躍起であり、しかも相変わらず若い女性を追いかけることにも夢中だった。

■ONEPOINT Review■
ひとの心の深層を、スケールの大きな作品のなかでえぐり出すという独特のスタイルを築いてきたソレンティーノ監督。ここでも度肝を抜くスケール感で乱交パーティーを描き、元首相を厚化粧で道化者のように仕立てて独自の世界をつくり出してゆく。映画自体からは意外なほど彼に対する怒りが感じられないが、最後の最後に大きなメッセージが示される。 (N.Yamashita)

監督:パオロ・ソレンティーノ 出演:トニ・セルヴィッロ/エレナ・ソフィア・リッチ/リッカルド・スカマルチョ/カシア・スムトゥニアク 
2018年イタリア(157分)  配給:トランスフォーマー 原題:LORO(THEM)
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/loro/  ©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA



『真実』 2019年10月11日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか

■大女優の母と女優になれなかった娘。母子の愛憎を仏国の人気女優ふたり、ドヌーヴとビノシュで描いた是枝監督最新作。米国俳優ホークが娘の夫役でからむのも話題だ。ことしのヴェネチア国際映画祭オープニング作品。
■初の自伝本「真実」の発売と新作映画を控え、インタビューを受ける国民的大女優ファビエンヌ。そこに出版の祝いを兼ねて、娘で脚本家のリュミールがTV俳優の夫と幼い娘を連れてNYから帰郷する。だがリュミールには女優の母から親身の愛情を受けた記憶は薄く、「真実」のゲラを読んだ途端そこに書かれたことは嘘っぱちだと母に抗議する。

■ONEPOINT Review■
前作『万引き家族』がカンヌでパルムドールを受賞してから1年数か月、〝女優〟を描く構想は是枝監督のなかに前からあったという。それがカンヌの栄誉のあと押しもあり最高の形で短期間に実現した。途中ファビエンヌが出演する映画が劇中劇として入れ子のようになった場面がある。もともと構想の土台となった部分だが、明暗のコントラストをつけつつ、最後はドヌーヴの貫禄も見せながら軽やかに締めくくる。(N.Yamashita)

監督:是枝裕和 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク/リュディヴィーヌ・サニエ/クレマンチヌ・グレニエ 
2019年日本=フランス(108分) 配給:ギャガ 原題:LA VERITE(THE TRUTH) 
公式サイト:https://gaga.ne.jp/shinjitsu/   ©photo L. Champoussin ©3B-Bunbuku-Mi Movies-FR3



『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』 2019年9月27日(金)から丸の内ピカデリーほか

■1969年に『ウエスタン』のタイトルで短縮版(141分)が本邦公開されたセルジオ・レオーネの伝説の西部劇。タランティーノなど映画関係者らによる称賛、賛辞の声が高まるなか、制作から50年を経てオリジナル版が公開される。
■大陸横断鉄道が敷かれはじめた19世紀末のアメリカ合衆国。鉄道が通る土地の所有者一家が皆殺しにされ、ニューオーリーンズから嫁いできた元高級娼婦のジルは、新生活を迎える前に未亡人となり相続人となる。犯人は殺し屋のフランクか、強盗団のボスか、それともハーモニカを奏でるナゾのガンマンなのか。ジルはその争いに巻き込まれてゆく。

■ONEPOINT Review■
マカロニウエスタン・ブームを起こしたエンタテインメントの監督が、スタイリッシュな映像美で熱狂的なファンを得た入魂の一作。レオーネの才能と底力が、瞬きひとつさせない緊張の導入部に凝縮されている。カルディナーレ、フォンダ、ロバーズ、ブロンソンと、役者一人ひとりの魅力も全開の異色のウエスタンだ。原案にのちの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチとダリオ・アルジェントの知恵を借りたのもいまでは語り草になっている。(N.Yamashita)

監督:セルジオ・レオーネ 音楽:エンニオ・モリコーネ 出演:クラウディア・カルディナーレ/ヘンリー・フォンダ/ジェイゾン・ロバーズ/チャールズ・ブロンソン 1968年イタリア=アメリカ(165分) 配給:アーク・フィルムズ/bold/インターフィルム 原題:ONCE UPON A TIME IN THE WEST 
公式サイト:http://onceinthewest2019.com/   ©1968 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 



『ディリリとパリの時間旅行』(アニメ―ション) 2019年8月24日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか

■芸術が花ひらき活気あふれる20世紀初頭ベル・エポックのパリに、南の島からやってくるひとりの少女。ひょんなことから有名芸術家らと知り合い花の都を満喫。そのころパリでは謎の少女誘拐事件が話題になっていた。
■ニューカレドニアに生まれ育った混血少女ディリリは、外国に憧れパリまで船で密航。バイリンガルの彼女は開催中の万国博覧会「原住民の村」に出演することに。ある日、配達人のオレルと出会い、彼のおかげでたくさんの著名芸術家らと知り合いになるが、パリでは少女たちを狙った誘拐事件が頻発しておりディリリもその標的となる。

■ONEPOINT Review■
オスロ監督自身が早朝に撮影したという、ひとも車もないまっさらな状態の実写のパリを背景にこのアニメーションは成り立っている。100年の年月を超えて街の景観が保たれてきたたまものだが、そこにピカソやマティス、ロートレック、ドビュッシー、サティ、コレット、サラ・ベルナールら数十人におよぶ実在した著名人が右往左往する面白さ。その一方、男性支配団という組織を登場させ反動的な動きがあったこともエンターテインメントのなか問題提起している。いまは忘れられたソプラノ歌手を復活させ、デセイが声を担当しているのも見どころのひとつ。(N.Yamashita)

監督:ミッシェル・オスロ 音楽:ガブリエル・ヤレド 声の出演:プリュネル・シャルル=アンブロン/エンゾ・ラツィト/ナタリー・デセイ 2018年フランス=ベルギー=ドイツ(94分) 配給:チャイルド・フィルム 原題:DILILI A PARIS 公式サイト:https://child-film.com/dilili/ ©2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION



『存在のない子供たち』  2019年7月20日(土)からシネスイッチ銀座ほか

■少年が人を刺して収監される。だが法廷で裁判を起こしたのはその少年だった。彼は「ぼくを生んだ罪」で両親を訴える。そこから見えてくる子どもたちの、そしてすべての〝下層市民〟たちの過酷な人生をドキュメンタリーと見まがうリアルで描いた人間ドラマ。『キャラメル』(07年)で注目されたレバノン出身のラバキー監督の最新作。
■ゼインは仲のいい妹のサハルがおとなになることを恐れていた。人身売買同然に嫁がされるからだが、その日がやって来て兄妹は引き離される。初潮が来たとはいえサハルはまだ11歳。ほんの子どもだった。絶望したゼインは家を出て不法滞在の女のバラックに子守と引き換えに住まわせてもらうが、さらに地獄のような日々がやってくる。

■ONEPOINT Review■
ラバキー監督は女優としても知られるが、本作に出演している本職の俳優は弁護士役の彼女のみ。映画と重なるような道を歩んできた演技素人のひとたちが、まるで自身の険しい人生を語るように役に挑んでいる。主人公役のゼイン少年はなかでも監督の〝宝物〟。ゴミだめのなかに咲く一輪の花のごとく画面の中で特別なオーラを放ち、彼の存在あっての作品になった。(N.Yamashita)

監督/出演:ナディーン・ラバキー 出演:ゼイン・アル=ラフィーア/ヨルダノス・シフェラウ/カウサル・アル=ハッダード 2018年レバノン=フランス(125分) 配給:キノフィルムズ/木下グループ
原題:CAPHARNAUM  公式サイト:http://sonzai-movie.jp/  ©2018MoozFilms



『新聞記者』  2019年6月28日(金)から新宿ピカデリーほか

■けっして表ざたになることのない内閣内での秘密裏の動きと、真実に迫ろうとひとり奮闘する女性記者。その両者をスリリングにつないで描いたポリティカル・サスペンス。実在する現役の新聞記者、望月衣塑子さんの著作をもとに、エンターテインメントも交えて描いたきわめて現実に近い〝フィクション〟。
■日本人の父と韓国人の母を持ち、米国育ちの吉岡エリカは父の母国で働く新聞記者。記者だった父が事件に巻き込まれ自死したことから、真実の追及にはひと一倍慎重だ。ある夜仕事場に「医療系大学の新設」という極秘文書がFAXで送られてくる。しかも認可先は内閣府。これはタレコミなのか誤報を誘うワナなのか。一方、内閣の情報調査室に出向中の杉原拓海は、外務省時代の上司神崎と久々に再会するも数日後に神崎は自殺。通夜の場でエリカと杉原は出会う。

■ONEPOINT Review■
原作の望月衣塑子さんは森友、加計問題の記者質問の際に、菅官房長官に食い下がって注目を集めたあのお方。フィクションの形はとっているが現政権のウソや忖度問題を告発していることは明らかで、そこがこの映画のいちばんの面白さであり見どころ。ただし問題は、現政権がこの告発を謙虚に受け止める繊細さをもっているかどうか。それとエリカ役、韓国人俳優ウンギョンの日本語のうまいこと。役柄の生真面目さも伝わってくる。(N.Yamashita)

監督:藤井道人 出演:シム・ウンギョン/松坂桃李/高橋和也/北村有起哉/田中哲司/本田翼/西田尚美 2019年日本(113分) 
配給:スターサンズ/イオンエンターテインメント  公式サイト:http://shimbunkisha.jp/  ©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ



『さよならくちびる』  2019年5月31日(金)から全国公開

■女性デュオと男性マネージャー。3人のトライアングルな恋模様をオリジナル曲にのせて描いた青春音楽映画。ふたりが劇中で歌う曲を、秦基博、あいみょんという人気シンガー・ソングライターが提供しているのも大きな話題だ。
■シンガー・ソングライターのハル(門脇)はある日、バイト先で孤独そうな少女レオ(小松)に出会い一緒にやらないかと声をかける。音楽は未経験のレオだったがハルに興味を抱き参加することに。そこにシマ(成田)という男があらわれスタッフ役を買って出る。しかし3人のあいだに微妙で複雑な恋心が芽生え関係はこじれてゆく。

■ONEPOINT Review■
小松菜奈、門脇麦、成田凌という実力もあるフレッシュな顔合わせがまずはこの作品のいちばんの魅力。脚本も書いた塩田明彦監督が新鮮な素材を壊すことなく巧みに調理してゆく。また曲を提供した秦基博とあいみょんが、『さよならくちびる』の映画世界を自分たちのテイストを活かしながらうまく表現しているのも大きく、門脇×小松がギターの特訓を経て、ハルレオのオリジナルとして聴かせるパフォーマンスも楽しい。(N.Yamashita)

監督:塩田明彦 出演:小松菜奈/門脇麦/成田凌
2019年日本(116分) 配給:ギャガ  公式サイト:https://gaga.ne.jp/kuchibiru/   ©2019「さよならくちびる」製作委員会



『コレット』  2019年5月17日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

■19世紀と20世紀というふたつの時代を生きたフランスの女性作家コレット。天真爛漫な子ども時代をへて年の離れた男性との熱愛、結婚そして創作活動と、その奔放な生きざまを『アリスのままで』の英国監督がさわやかに描いた。
自然を愛しのびのびと育ったコレットは、家に出入りする14歳も年上の作家ウィリーに見初められ結婚する。結婚生活は順調だったが、夫はサロンの常連で浪費癖が抜けず、また浮気も日常茶飯事。一方、人気作家の彼はしばしばほかのライターに自作を書かせており、目利きでもある彼がゴーストライターとして目をとめたのが妻のコレットだった。

■ONEPOINT Review■
最初は夫名義で出された「クローディーヌ」シリーズや「青い麦」の作者として知られるコレット。女性作家の草分けだが、夫の性の遍歴に負けず彼女自身も男性だけでなく、女性たちとも浮名を流したことで知られる。また作家活動だけではなく、同性の恋人ミッシーとともに前衛劇やパントマイムで舞台に立つこともあった。そんな型破りなコレットをナイトレイが演じているのも、作品にさわやかさを送り込んでいる一因だ。(N.Yamashita)

監督:ウォッシュ・ウエストモアランド 出演:キーラ・ナイトレイ/ドミニク・ウェストつ/デニース・ゴフ/フィオナ・ショウ/エレノア・トムリンソン/ロバート・ピュー/レイ・パンサキ 2018年英国=米国(111分) 配給:東北新社/STAR CHANNNEL MOVIES 原題:COLETTE  
公式サイト:https://colette-movie.jp/   © 2017 Colette Film Holdings Ltd / The British Film Institute. All rights reserved.


『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』  2019年5月10日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

■クラシック・バレエ界きっての個性派ダンサーとして異彩を放った旧ソ連出身のルドルフ・ヌレエフ。彼の幼少から運命の〝あの日〟までを描いた実話物語。英国の名優レイフ・ファインズが監督し、自ら教師役も演じている。 
幼いころから踊りに興味を示したルドルフ少年は、母の理解を得てバレエ学校に入学。やがて成長して世界的に有名なキーロフ・バレエに入団する。バレエ団の一員として海外公演に同行した彼は、パリでオペラ座やルーブル美術館などの文化、芸術に触れ感銘を受けるが、なによりその心をとらえたのは祖国ソ連にはない自由な空気だった。

■ONEPOINT Review■
ヌレエフというとやはり亡命後のことが一般的には有名。1977年にはケン・ラッセル監督『バレンチノ』の主役に抜擢され、93年にAIDS死するまでさまざまなスキャンダルにもまみれた。だが本作で描かれるのは、亡命に至るまでの若き日の姿だ。演じるのは本人よりもややイケメンな現役プリンシパルのオレグ・イヴェンコ。バレエ好きにはポルーニンが出演していることも特筆であり、映画的にはスリリングな終盤がやはり見どころ。(N.Yamashita)

監督/出演:レイフ・ファインズ 出演:オレグ・イヴェンコ/アデル・エグザルコプロス/ラファエル・ペルソナ/チュルパン・ハマートヴァ/セルゲイ・ポルーニン 2018年英国=ロシア=仏国(127分) 原題:THE WHITE CROW 配給:キノフィルムズ/木下グループ  公式サイト:http://white-crow.jp/
©2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS  メイキング映像:https://youtu.be/KMd_R_fP82E


『バイス』  2019年4月5日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

●飲んだくれで落ちこぼれの学生時代から一転、のちに妻となる恋人の強力なバックアップのもと成り上がってゆくひとりの男。最終的にはブッシュ政権を操った影の存在、ディック・チェイニー副大統領を描いた実話物語。彼だけでなく米国政治の表舞台で活躍?した存命の有名政治家の野心や悪徳、無能がつぎつぎと暴かれてゆく衝撃のドラマだ。
1963年、名門イェール大学を退学となったチェイニーはうだつの上がらない青春時代を過ごすが、恋人リンに愛想をつかされ目が覚める。政治を目指しはじめた彼は下院議員ラムズフェルドに出会ったのをきっかけにのし上がってゆき、ついにはブッシュ政権の副大統領(バイス)となり、無能なブッシュを傀儡にして政治を動かしはじめる。
■ONEPOINT Review■
リサーチに自信あり、とはいえ、存命の有名政治家をここまでこき下ろすことができるのは、やはり米国に民主主義というものが根づいているからだろうか。もともとコメディをつくってきた監督は、リアルななかにブラックユーモアをたたえ茶化してゆく。その笑いに大いに応えているのが馬鹿ブッシュ(息子のほう)を演じているサム・ロックウェル。そしてチェイニー役のベイル、ラムズフェルド役のカレルと役者がそろった。(N.Yamashita)

監督:
アダム・マッケイ 出演:クリスチャン・ベイル/エイミー・アダムス/スティーヴ・カレル/サム・ロックウェル/タイラー・ペリー 
2018年米国(132分) 配給:ロングライド 原題:VICE  ©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
公式サイト:http://longride.jp/vice/  予告編:https://www.youtube.com/watch?v=ttBtd7zmCvY


『ビリーブ 未来への大逆転』   2019年3月22日(金)から全国公開

●名門大学院を首席で卒業するも、女であることが壁となり弁護士の道を閉ざされるひとりの女性。80歳を超えたいまも現役で活躍する米国の最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグのいばらの道を描いた実話物語。のちに「男女平等」裁判に臨み、不本意な人生を逆転させてゆく痛快ドラマだ。
夫の勤務地の関係でハーバード大学院からコロンビア大学院へと移籍。1959年、ルースは首席で卒業して弁護士を目指す。だが子持ちの女性でユダヤ系の彼女に門戸を開いた弁護士事務所はひとつもなかった。やがて大学で法律を教えるようになり、あるとき男女差別を是正するのに格好の裁判があることを夫が教えてくれる。

■ONEPOINT Review■
日本の男女格差ランキングは先進国中、いつもダントツの最下位。全体でも毎年100位以下と悲惨な結果なのはよく知られるが、では自由平等をうたう国アメリカはどうか。じつは年々下降し昨年は51位だった。いくらトランプの時代でもこれはひどすぎ、しかし50年前はその比ではなかった。そんな過去の実態を、主人公ルースの実の甥で製作総指揮も務めたスティエプルマンが脚本にして暴いた。エンタテインメントで描く真実の物語。(N.Yamashita)

監督:ミミ・レダー 出演:フェリシティ・ジョーンズ/アーミー・ハマー/キャシー・ベイツ 2018年米国(120分) 配給:ギャガ 
原題:ON THE BASIS OF SEX  公式サイト:https://gaga.ne.jp/believe/   
©2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO.,LLC.


『運び屋』 2019年3月8日(金)から全国公開

●ほんの軽い気持ち、アルバイト気分で始めたドライバーの仕事がじつは麻薬の“運び屋”。警察の大捜査がおよぶ騒動に巻き込まれてゆく老人の話だ。とは言ってもギャング映画やサスペンスの類ではない。おもに主人公と彼の家族関係にフォーカスした人間ドラマになっている。
長年高級ユリの栽培に打ち込んできたアールだが、家庭を顧みなかったことから妻や娘に見限られ、おまけにネット販売に押されて財産も失う。そんなとき、車を運転するだけで小遣い稼ぎができるいい話があると持ちかけられる。

■ONEPOINT Review■
久しぶりに監督と主演の両輪を務めるイーストウッド。御年89歳になろうというこの大長老は、“枯れてしまった”人間の情けなさや可笑しみを身をもって体現し、ハートフルな人間ドラマをつくってゆく。そこにあるのは演技以上のものだ。気骨のある、茶目っ気たっぷりなセリフのひとつひとつが、イーストウッド本人の言葉のようにも聞こえてくる。(N.Yamashita)

監督/出演:クリント・イーストウッド 出演:ブラッドリー・クーパー/ローレンス・フィッシュバーン
2018年米国(116分) 配給:ワーナー・ブラザース映画 原題:THE MULE  公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie/ 
©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


『グリーンブック』 3月1日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか

●アメリカで黒人のための公民権法が成立する少し前、1962年のニューヨークであったほんとうのお話。まだ黒人差別が公然と行われるなか、イタリア系移民の白人トニーはある日職を失い、著名な黒人ピアニスト“ドクター”のお抱え運転手となる。運転手兼マネージャー兼用心棒? コンサートツアーのためだが、ドクターは黒人差別が著しい南部都市へとどんどん足を延ばしてゆく。その方々で歓迎される一方、激しい差別も受ける。さまざまなトラブルを回避してゆくうちに、ふたりのあいだに不思議な絆が生まれる。トニーの実の息子が原案を練り映画化した。

■ONEPOINT Review■
「グリーンブック」というものが長らく存在し、黒人専用の宿泊施設ガイドブックであることをこの映画ではじめて知った。映画の主人公トニーもそんなものがあったのかと仰天する。黒人VS白人の構図だけではなく、白人のなかの貧困層イタリア系移民社会や、夫トニーの日常的な差別意識に心を痛める妻など複眼的な視点でドラマは構築されてゆく。過去に障害者を笑いのなか描いて物議をかもしたピーター・ファレリー監督。その真意と彼の人権意識は本作で十分証明されたのではないか。そしてふたりのアカデミー賞候補、マハ―シャラ・アリの安定の演技に加えて、モーテンセンの変貌ぶり(変身?)にも驚かされる。(N.Yamashita)

監督:ピーター・ファレリー 出演:ヴィゴ・モーテンセン/マハ―シャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ
2018年米国(130分) 配給:ギャガ 原題:GREEN BOOK  公式サイト:https://gaga.ne.jp/greenbook/


『天才作家の妻 -40年目の真実-』 1月26日(土)から全国公開

●ノーベル賞の季節、栄誉を授けられる男性たちが壇上に並びそれを妻たちが晴れがましく見守る。そんな例年の見慣れた光景に冷水を浴びせるような、シニカルな人間ドラマだ。
いよいよかと受賞の知らせを待つ作家のジョゼフとその妻ジョーン。受賞の電話を受け、ふたりで手を取り合って喜ぶも束の間。授賞式出席のためにスウェーデン入りするあたりから雲行きはおかしくなってくる。浮ついた夫とは対照的に過去のさまざまなことが頭をよぎるジョーン。夫の浮気性、そして何よりあの秘密。そこにひとりの記者がスキャンダルをかぎつけて近寄ってくる。

■ONEPOINT Review■
女性たちの逆襲が始まっている?妻のジョーンが最もキレる場面は夫のジョゼフが「妻は書きません」と記者たちの前で断言するところだ。自分を犠牲にするのはいとわない、だが怒りが爆発するにいたる数々の夫の不誠実。それがここではうまく描かれている。米国のメグ・ウォリッツァーの原作を、同じ米国のジェーン・アンダーソンが大胆に脚本化した。ふたりの女性ライターのたまもの。 (N.Yamashita)

監督:ビョルン・ルンゲ 出演:グレン・クローズ/ジョナサン・プライス/クリスチャン・スレーター/マックス・アイアンズ/ハリー・ロイド/アニー・スターク  2017年スウェーデン=米国=英国(101分) 配給:松竹 原題:THE WIFE  公式サイト:http://ten-tsuma.jp/


『蜘蛛の巣を払う女』 1月11日(金)から全国公開

●新しい世紀に入ってまもなく出版されて大ベストセラーとなったミステリー小説シリーズ「ミレニアム」3部作は、地元スウェーデンで3作、その後デヴィッド・フィンチャー監督によりハリウッドで1作が映画化されこちらも大ヒットした。しかし「いわくつき」の作品として知られる。作者スティーグ・ラーソンが出版および映画化の前に他界してしまったからだ。パートナーの女性によって陽の目を見ることにはなったが、新作は2度と拝めないはずだった。ところが2015年になって別のスウェーデン人作家デヴィッド・ラーゲルクランツによる“新作”「蜘蛛の巣を払う女」が登場。本作はその映画化でハリウッド版第2弾でもある。フィンチャーはプロデュースに回り『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレス監督がメガホンをとっている。
●悪人を懲らしめながら生きるハッカーのリスベット。悪用すれば地球を危機に陥れかねないソフトウェアを米国国家安全保障局(NSA)から取り戻す仕事の依頼が入る。しかし関わるうちに背後の黒幕が自分の父と、彼との確執の果てにおいてきた双子の妹であることがわかってくる。

■ONEPOINT Review■ 
スウェーデン版のノオミ・ラパス~ハリウッド第1弾のルーニー・マーラときて、ダークヒロイン、リスベットを今回演じるのはTVシリ ーズ「ザ・クラウン」でブレイクし売出し中のクレア・フォイ。好みは分かれるところだが三者三様の個性で見せてくれる。(N.Y.)

監督:フェデ・アルバレス  出演クレア・フォイ/シルヴィア・フークス/スヴェリル・グドナソン/クレス・バング/レイキース・スタンフィールド/スティーヴン・マーチャント 2018年米国 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 原題:THE GIRLS IN THE SPIDER'S WEB  
公式サイト:http://www.girl-in-spidersweb.jp/




<今週の扉アーカイヴ 2018> ARCHIVE 2018

■私は、マリア・カラス(ドキュメンタリー)
12月21日(金)~TOHOシネマズシャンテほか

●本人が自ら語る伝記映画ほど説得力のあるものはないだろう。たとえそれが仮に偽りの言葉であったとしても、だ。オペラ・ディーヴァ、世紀の歌姫マリア・カラスが生前に残したインタビューを中心に貴重な映像で構成されたドキュメンタリー。プライベート・フィルムはじめ珍しい映像も多々含まれていて、熱心なカラス・ファンをも刺激する作品になっている。『永遠のマリア・カラス』でカラス役を演じたフランス女優ファニー・アルダンが、朗読で一役買っている。
■ONEPOINT Review●トム・ヴォルフ監督の「マリア・カラス歴」は浅いらしいのだが、数年前にカラスに憑りつかれ一気につくり上げたのがこの一作。カラス以外の多くのインタビューも試みるなか、本人の言葉に勝る証言はなかったという。監督の瞬発力、そして判断力の成果。(N.Y.)
監督:トム・ヴォルフ 出演:ファニー・アルダン(朗読)/マリア・カラス   2017年米国(113分) 
配給:ギャガ 原題:MARIA BY CALLAS   公式サイト:https://gaga.ne.jp/maria-callas/ 


■マダムのおかしな晩餐会  
11月30日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか

●ヨーロッパ映画界随一のユニークな風貌の女優と言えばこのひと、ロッシ・デ・パルマ。ペドロ・アルモドバル監督に見いだされ同監督作品に欠かせない名バイプレイヤーとして知られるが、彼女がメイドに扮しセレブ一家の社交の場をかき乱してゆく愉快な物語。主人と使用人というヒエラルキーにも一石投じた、少々シニカルな味わいのコメディーになっている。フランス出身でもともと作家の女性監督アマンダ・ステールは本邦初登場。
●13というのはやはり縁起の悪い数字なのか。12人の予定の晩餐会が予期せぬゲストの来訪で13人となり、主宰者のマダムが急遽使用人のマリアを客に仕立てたことから思いもよらないことが次々と起きてゆく。なかでも想定外だったのは客のひとりがマリアに恋をしてしまったこと。マリアもその気になって…。
■ONEPOINT Review●あのロッシ・デ・パルマが社交界の花形に変身?無理はないのかと思えば、これが全然ないのはやはり名優ゆえか。原作者であるステール監督は脚本も共同で書いていて、群像劇の中心人物をマダムからメイドへとうまくスライドさせてゆく。(N.Y.)
監督:アマンダ・ステール 出演:トニ・コレット/ハーヴェイ・カイテル/ロッシ・デ・パルマ/マイケル・スマイリー/トム・ヒューズ 2016年仏国(91分) 配給:キノフィルムズ 原題:MADAME 
公式サイト:http://www.madame-bansankai.jp/ 


■バルバラ~セーヌの黒いバラ~    
11月16日(金)~渋谷・Bunkamuraル・シネマほか

●黒づくめの衣装で舞台に立ち、異彩を放った伝説のシャンソン歌手バルバラ。エディット・ピアフ以来最大のという形容詞とともに語られることが多いが、その音楽スタイルはピアフともほかの誰とも似ていない。1997年に67歳で他界してからちょうど20年。特異な個性にふさわしく少々風変わりな、一筋縄ではいかない映画が誕生した。伝説の歌手バルバラの伝記映画を撮影中の女優ブリジットがこの映画の主人公。バルバラ本人の生前の映像も挿入され、言ってみれば二重構造の作品になっている。そして撮影が進むうちにいつしかブリジットはバルバラという存在に取り込まれ、観客もバルバラ本人とブリジットとの境が見極められなくなってくる。ブリジットを演じるのは女優で歌手でもあるジャンヌ・バリバール。監督は俳優としてのほうが知名度は高いが、監督としても活躍するマチュー・アマルリック。監督役という重要な役柄で彼自身登場する。
●ONEPOINT Review●不思議で手ごわい作品だがバルバラ・ファンは必見だろう。予備知識があるとかなりすんなり入ってくるので、死後出版された回顧録「未完の回想 一台の黒いピアノ…」を読んでおくことをおすすめする。(N.Y.)
監督/出演:マチュー・アマルリック 出演:ジャンヌ・バリバール 2017年仏国(99分) 配給:ブロードメディア・スタジオ 原題:BARBARA 公式サイト:http://barbara-movie.com/    


■ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲
11月9日(金)~全国公開

●ジェームズ・ボンドとともにイギリスを代表する?秘密諜報員ジョニー・イングリッシュが三たび登場。1作目の『ジョニー・イングリッシュ』(03年)から15年、前作『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』(11年)を経て今回も、ローワン・アトキンソンのしょうもないギャグが炸裂する。
IT化にどっぷりと浸かる英国の秘密情報部がサイバー攻撃に遭い、現役エージェント全員の情報が漏洩。そこで現役以外の、つまり引退した諜報員を呼び戻すことになるが、すでにあの世に行ってしまったかその境を彷徨っているひとばかり。仕方なく白羽の矢を立てたのが、いまは子ども相手に教師生活を送っているジョニー・イングリッシュだった。ハイテク知らずの時代遅れなアナログおじさん、適任と言えば適任だが…。
●ONEPOINT Review●アトキンソンは予定調和的なギャグでこれでもかと攻めてくる。落ちはわかっているのに…でも笑わずにはいられない(N.Y.)
監督:デヴィッド・カー 出演:ローワン・アトキンソン/オルガ・キュリレンコ/エマ・トンプソン/ベン・ミラー/ジェイク・レイシー   公式サイト:https://johnnyenglish.jp/
2018年英国=仏国=米国 配給:東宝東和 原題:JOHNNY ENGLISH STRIKES AGAIN   


■テルマ    
10月20日(土)~YEBISU GARDEN CINEMAほか

●イザベル・ユペール主演の『母の残像』(2015年)で本邦デビューし、繊細な人間描写が注目されたデンマーク出身のヨアキム・トリアー監督。4作目の最新作は
多感な少女の内面を巧みに描きながらも、彼女が持つ特異な超能力=スーパーナチュラルに焦点を当てた新たな試みの作品になっている。
田舎町で信仰心の厚い厳格な両親に育てられたテルマは、大学進学が決まり大都市オスロでひとり暮らしを始めるがある日、原因不明の発作に襲われて病院に運ばれる。そのとき助けてくれたのが同級生のアンニャ。テルマは自分とはまったく違い自由奔放で大人の雰囲気を持つ彼女に、憧れを持ち惹かれてゆく。だが同性への思いは大きな葛藤をもたらすことに。
監督:ヨアキム・トリアー 出演:エイリ・ハーボ―/カヤ・ウィルキンス/ヘンリク・ラファエルソン/エレン・ドリト・ピーターセン 2017年ノルウェー=仏国=デンマーク=スウェーデン(116分) 
配給:ギャガ 原題:THELMA   公式サイト:http://gaga.ne.jp/thelma/


■アラン・デュカス 宮廷のレストラン 
10月13日(土)~シネスイッチ銀座ほか

●ポール・ボキューズの偉業を継ぐ次世代の料理人として、この8月に亡くなったジョエル・ロブションとともにフランス料理界をリードしてきたアラン・デュカス。彼は初の試みとしてパリ近郊のヴェルサイユ宮殿内にレストランを計画。ルイ16世やマリー・アントワネットの食卓をいまに再現しようというものだが、カメラは新たな挑戦に向かって始動した巨匠に2年間密着。フレンチだけでなく世界の料理界を牽引するデュカスの仕事ぶり、そして人となりを追ってゆく。美食を生み出してきた巨匠の眼光は鋭く、佇まいはいつもエレガントそのもの。その一方、気さくな一面も見せる。自身は実家の畑でできた野菜で育ち、肉はほとんど食べなかったと打ち明ける。いまは滅多に料理することなくむしろプロデューサー的存在だが、好奇心が枯れることはない。京都のデパ地下で気になるシュークリームを見つければ買い求 め、ホテルでさっそく味見する。自らの感性に沿った行動力、そして人柄の良さも成功の秘密だろうか。
監督:ジル・ド・メストル 出演:アラン・デュカス 2017年仏国(84分) 
配給:キノフィルムズ/木下グループ 原題:LA QUETE D'ALAIN DUCASSE(THE QUEST OF ALAIN DUCASSE)  公式サイト:http://ducasse-movie.jp/   


■響-HIBIKI-  
9月14日(金)から全国東宝系で公開

●異才の出現を待ち望んでやまない文学界に突如すい星のごとく現れた天才文学少女、響。文芸誌の熱血女性編集者によって発掘され快進撃が始まってゆく。
響(ひびき)は文才だけでなく確固たる信念の持ち主ゆえに、正しいと思えば歯に衣着せぬどころか暴力をもいとわない。ストレートな言動と行動で周囲をなぎ倒してゆく様子は漫画チックだが痛快だ。原作は「マンガ大賞2017」の大賞受賞作。文学界の裏側をあることないこといじって見せられるのも、原作がコミックならでの強みだろう。主人公の響を欅坂46のセンター平手友梨奈が、編集者を北川景子が演じている。

監督:月川翔 脚本:西田征史 原作:橋本光晴「響~小説家になる方法~」 
出演:平手友梨奈/アヤカ・ウィルソン/高嶋政伸/柳楽優弥/北村有起哉/野間口徹/小松和重/黒田大輔/板垣瑞生/吉田栄作/小栗旬/北川景子 
2018年日本(104分) 配給:東宝  公式サイト:http://hibiki-the-movie.jp/  


■判決、ふたつの希望  
8月31日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか


●ふたりの市井の男による些細な口論が事件の始まりだった。ところが、キリスト教派のレバノン人とレバノンに暮らすパレスチナ難民という対立する民族だったことから国家レベルの大論争、大裁判へと発展してゆく。クエンティン・タランティーノ監督のもとでいっとき腕を磨いたレバノン出身のジアド・ドゥ・エイリ監督が、実際に自分の身に降りかかったことをもとに脚本・映画化し、同国作品としては初めてアカデミー賞(第90回)の外国語映画賞にノミネートされた。また主演のひとりカメル・エル=バシャはパレスティナ人として初めてベネチア映画祭(第74回)男優賞を受賞している。 違法建築の補修作業を進めていたパレスチナ人の現場監督ヤ―セル。水漏れを発見して補修していると、住人のトニーがそれを見て激高し破壊してしまう。ヤ―セルも怒って捨て台詞とともにその場を去るが、丸く収めようとした雇い主の説得でしぶしぶ謝罪に行くことに。ところがヤ―セルはトニーからとんでもない侮蔑的な言葉を投げつけられ、暴力をふるってしまう。
パレスチナ難民が大きく関わった忌まわしい内戦の記憶、ふたりの男がそれぞれに抱える悲しい過去…。ドゥエイリ監督は巧みな脚本で感動的なエンディングへと導いてゆく。
監督:ジアド・ドゥエイリ 出演:アデル・カラム/カメル・エル=バシャ/カミール・サラーメ/リタ・ハーエク/クリスティーン・シュウェイリー/ディヤマン・アブー・アッブード 2017年レバノン=仏国(113分)配給:ロングライド 英題:THE INSULT   公式サイト:http://longride.jp/insult


■ミッション:インポッシブル/フォールアウト
8月3日(金)から全国公開

●CIAの特殊作戦部門IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)のチーム・リーダー、イーサン・ハント。課せられたのは盗まれたプルトニウムの回収という地球規模の危機を背負うミッション。一筋縄でゆくはずもなく、パリ、ロンドン、ニュージーランドと美しい街や自然を背景に起こるのは危険に次ぐ危険、危機一髪の連続だ。そんな過酷でスリリングな任務を華麗なアクションとともにクリアしてゆくハント。それにしても、無謀なのはイーサン・ハントなのかそれともハントを演じるトム・クルーズなのか。55歳を超えたクルーズが満身創痍になりながら挑む、本気度伝わるクールで熱い最新作、シリーズ第6弾だ。

監督:クリストファー・マッカリ― 出演:トム・クルーズ/ヘンリー・カヴィル/サイモン・ペッグ/レベッカ・ファーガソン/ヴィング・レイムス  2018年米国(148分) 配給:東和ピクチャーズ 
原題:MISSION: IMPOSSIBLE-FALLOUT     公式サイト:http://missionimpossible.jp                                  


■北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ
7月14日(土)から
シアター・イメージフォーラムほか

●1980年代初めのデビュー当時から「ヤバイ」存在として一目置かれてきたスロベニア(旧ユーゴスラビア)出身のロックバンド、ライバッハ。35年以上たったいまもなお存続し、2015年に北朝鮮で行ったコンサートを収めたのがこのドキュメンタリー映画。バンドの面々が現地入りし、リハーサルを行い、公演にこぎつけるまでの紆余曲折をカメラが収めているが、まずそのミスマッチぶりが面白い。
北朝鮮政府が祖国解放記念日を祝うイベントに欧米から招へいしたロック・ミュージシャン、それはストーンズでもポール・マッカートニーでもなく、世間的にはあまり有名でないアヴァンギャルド集団、ライバッハだった。日本でも過去にアルバムが出されている彼らは、ナチスを彷彿とさせるユニフォームやパフォーマンスで聴衆をあおる「問題児」。ゆえにコアなファンが多い。そんな彼らがなぜ「ロック初心者」北朝鮮政府のお眼鏡にかなったのか。この映像を通して真の北朝鮮を垣間見ることはできるのか。北朝鮮とライバッハおよびスタッフの思惑はなにか。裏の裏を読み取る楽しさがこの映画にはある。
監督:モルテン・トローヴィク/ウギス・オルテ 出演:ライバッハ/ライバッハ・クルー/北朝鮮の人々 2016年ノルウェー/ラトビア(100分)  
配給:エスパース・サロウ 原題:LIBERATION DAY  ©VFS FILMS / TRAAVIK.INFO2016
公式サイト:http://kitachousen-rock.espace-sarou.com/        


■告白小説、その結末 
6月23日(土)から
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか

●自殺した母とのことをつづりベストセラー作家になったデルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)。ある日、新刊のサイン会に熱烈なファンだというミステリアスな女性(エヴァ・グリーン)があらわれ、作家の私生活に入り込んでくる。ゴーストライターと称する彼女は「エル」と名乗り、友人として頼りになる一方で信じられない行動も目立ち始める。だがその波乱に満ちた人生に小説の題材を見出したデルフィーヌは、エルとともに山小屋にこもって執筆することに…。フランスの人気女性作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説をもとにしたポランスキー流サイコ・サスペンス。見終わったあとになるほどと思うところ多々あり。

監督:ロマン・ポランスキー  出演:エヴァ・グリーン/エマニュエル・セニエ/ヴァンサン・ペレーズ 2017年仏国=ベルギー=ポーランド(100分) 配給:キノフィルムズ/木下グループ 
原題:D'APRES UNE HISTOIRE VRAIS(BASED ON A TRUE STORY)  
©2017 WY Productions, RP Productions, Mars Films, France 2 Cinéma, Monolith Films. All Rights Reserved.  公式サイト:https://kokuhaku-shosetsu.jp/      


■最初で最後のキス 
6月2日(土)から新宿シネマカリテほか


●イタリアの地方都市ウーディネ。そこの高校にトリノからひとりの男子生徒が転校してくる。おしゃれで自らゲイであることを自覚し隠すこともないロレンツォ。
浮いた存在となるが、ほかの浮いたふたり、“尻軽女”と揶揄される少女ブルーと、バスケはうまいが他の部員からはトロいと馬鹿にされているアントニオと心を通わ せる。だがロレンツォのアントニオに対する恋心があだとなって事件が起きる。イタリアで実際に起きた出来事をもとにコトロネーオ監督が書き下ろした。

監督:イヴァン・コトロネーオ 
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー|ヴァレンティ―ナ・ロマーニ|レオナルド・パッザッリ 
2016年伊国(106分) 配給:ミモザフィルムズ 原題:UN BACIO ©2016 Indigo Film – Titanus


■ピーターラビット
5月18日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか


  
●世界で一番有名なうさぎ、ピーターラビット。1902年に誕生し100年以上も親しまれてきたビアトリクス・ポター原作の絵本「ピーターラビット」が初めて実写映画化された。もちろんピーターをはじめとしたウサギやほかの動物たちはコンピュータ・グラフィック技術を駆使した創造物。原作の穏やかでおっとりとした雰囲気とは別ものの、いかにも現代的でスピーディーな物語に仕上げているが、冒険好きでお茶目で個性的なピーターたちは方々で愛らしい表情を見せてくれる。

監督:ウィル・グラック 出演:ローズ・バーン/ドーナル・グリーソン
2018年米国 配給:ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント 原題:PETER RABBIT


■ザ・スクエア 思いやりの聖域
4月28日(土)から全国公開

●「ザ・スクエア―思いやりの聖域」という参加型の現代アートを企画中の売れっ子キュレーター、クリスティアン。ある日、ひと助けをしたにも関わらず携帯と財布を盗まれて怒り心頭。部下から仕返しをけしかけられ、しぶしぶ行動に出たことから事態は思わぬ方向に向かってゆく。
一方、企画展に関して宣伝会社が暴走してしまい大炎上。クリスティアンは収拾に奔走する羽目になる。
『フレンチアルプスで起きたこと』(14年)が日本でも注目されたリューベン・オストルンド監督が昨年のカンヌで最高賞のパルムドールを受賞した最新作。
ひとのふとした行いがどんどん人生を狂わせてゆくというシニカルな視点がいっそう強調されている。
監督:リューベン・オストルンド 出演:クレス・バング/エリザベス・モス
2017年スウェーデン=独国=仏国=デンマーク(151分) 配給:トランスフォーマー 
原題:THE SQUARE   ©2017 Plattform Prodtion AB / Societe Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS


さよなら、僕のマンハッタン
4月14日(土)から丸の内ピカデリーほか



●主人公トーマス(カラム・ターナー)には意中のひとがいるが、父のミステリアスな不倫相手(ケイト・ベッキンセール)と出会い心惹かれる。
一方心不安定な母(シンシア・ニクソン)の重大な秘密を知り、物語は思わぬ方向に動いてゆく。
『(500日)のサマー』『gifted/ギフテッド』で心をつかんだマーク・ウェブ監督が、地元ニューヨークを舞台に描いた青春物語。

監督:マーク・ウェブ 出演:カラム・ターナー/ケイト・ベッキンセール
2017年米国(88分) 配給:ロングライド 原題:THE ONLY LIVINGBOY IN NEW YORK


ウィンストン・チャーチル  
ヒトラーから世界を救った男
3月30日(金)からTOHOシネマズシャンテ









監督:ジョー・ライト 
出演:ゲイリー・オールドマン/クリスティン・スコット・トーマス
2017年英国(125分) 配給:ビターズ・エンド/パルコ 原題:DARKEST HOUR 


レッド・スパロー
3月30日(金)から全国公開









監督:フランシス・ローレンス 出演:ジェニファー・ローレンス/ジョエル・エドガートン
2018年米国(140分) 配給:20世紀フォックス 原題:RED SPARROW






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