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シネマカルチャーCinemaCulture REVIEW







■レビュー REVIEW 
チョン・ジェウン監督 × 中山美穂 × キム・ジェウク
5月12日(土)公開『蝶の眠り』 ラブストーリーの秀作が
誕生





■REVIEW『蝶の眠り』

●チョン・ジェウン監督久々の新作と気づかずに、あやうくスルーするところだった。デビュー作『子猫をお願い』(01年)で少女たちの青春を瑞々しく描き、鮮烈な印象を残した韓国の女性監督。日本で公開されたのは2004年だったからそこから数えても14年の歳月が流れた。
この間、ほかの監督たちとの競作作品や本邦未公開のドキュメンタリーなどがあり、久々に取り組んだ本格的な劇映画は中山美穂を主演に迎え自ら書き下ろしたラブストーリー。しかし青春映画と恋愛物語の違いはあっても、デビュー作のあのさわやかな風、ジェウン監督らしい感性は健在だった。
大道具と小道具を巧みに使って練り上げられてゆくきめ細かな脚本。そこにはさわやかな風を吹かせる緑豊かな都会の自然があり、舞台として使われる開放的な住まいがある。建築家、阿部勤さんの家がそのまま使われているのも建物好きにはたまらない。
一方小道具は、その美しい建造物のなかである法則を持って並べられることになる図書館張りの数を誇る蔵書、あるいは小説家である主人公の涼子が大切にしている万年筆。さらに監督自身大好きだという日本の作家への小説愛も随所にちりばめられる。

●私生活を描いた小説がベストセラーとなった人気作家の涼子は、スキャンダラスな一面もあるが作家としての実力を認められ尊敬もされている。だが夫と別れひとり住まいのなか、以前から憂慮していた遺伝性のアルツハイマー病が徐々に進行し遠くはない人生の身終いを考え始める。そんなとき作家志望の留学生チャネを大学の教え子から紹介される。
小道具の万年筆もキム・ジェウク演じるチャネの打算のない生きざまも、すべてが脚本のなかで意味を成して終盤にじわりと効いてくる。愛の記憶の喪失と闘う主人公の悲哀。ラブストーリーの秀作の誕生だ。

                                                  (Text by NorikoYamashita 2018年4月23日 記)


●蝶の眠り|5月12日(土)~角川シネマ新宿ほか全国公開 監督:チョン・ジェウン 出演:中山美穂/キム・ジェウク/永瀬正敏
      2018年日本=韓国(112分) 配給:KADOKAWA  ©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS




©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS



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