i
シネマカルチャーCinemaCulture NEWS






ニュース!NEWS! 
セルゲイ・ポルーニン 来日オフィシャル・インタビュー 
                                

『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』の公開に先がけて来日したポルーニン。その公式インタビューをご紹介。
同作品は7月15日(土)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほかでロードショー公開。 (2017年7月13日 記)

――ご自身のドキュメンタリーをご覧になっていかがでしたか?
正直に言えば、最初は見たくなかった。ロサンゼルスでデヴィッド・ラシャペルと一緒にいた時に彼が「これからあの映画を観ることになっている」と言ったんだ。僕はビールを9本も飲んで、彼の隣に座った。本当に緊張して、彼の脚を蹴ってしまったよ。自分を客観的に見てみたかったんだけどできないね。画面に映し出された自分を見るとそのときの感情が蘇るし、自分の素の部分を呼び覚ましてしまう。まるで感情のジェットコースターに乗ってるような気分だった。

――映画の中で「Take Me To Church」をダンスとの惜別と考えていると言っていました。なぜ続ける気になったのですか?
「Take Me To Church」をラストダンスのつもりで踊った。あの時はダンスが好きじゃなかったし、バレエ界に腹も立ててたから、とにかく終わらせたかった。これで何もかも終わりなんだという気持ち――臨終の感覚のような中で踊っていると、自分の中のもやもやとした霧のようなものが少しずつ晴れていくような気がした。

空っぽになって、感情の赴くままに踊った。すると、僕が捨て去ろうとしているもののことばかりが頭に浮かんでとても悲しかった。それで思ったんだ、僕は何かを見失っているのかもしれないと。 撮影が終わってすぐにゼレンスキーに話したんだ。「ギャラはいらない、ダンスが好きだから踊りたい」とね。
“ダンスを愛しているから踊りたいんだ”ということを、僕はきちんと自覚しなくてはならなかったんだ。
その後の YouTube の反響を見てすごく驚いた。子どもが僕の真似をして踊ってくれたり…バッドボーイでも人々に受け入れてもらえるんだ、僕の踊りは人々になにかを与えることができるんだとあらためて感じた。それに、このミュージックビデオを監督した写真家のデヴィッド・ラシャペルは素晴らしいアーティストで、楽曲、振付、環境、ビジュアル…すべてが整い、これこそ新たなものを作り出す体験だと思った。
もちろんクラシックバレエ(古典)はとても大事なもので、伝統は保たなければならないと思っている。その一方で、創造性をもってただ踊る道具になるのではなく、生み出すことができるアーティストにならなければいけないと思ったんだ。

――“プロジェクト・ポルーニン”を始められたきっかけを教えてください。
ダンスを通して現状を変えたい、という思いがいまの僕を動かしています。自分のためだけなら僕はもうバレエを続けていなかったと思う。だけどこのプロジェクトでダンサーたちに発言権を与え、踊りに集中できる環境を整えたい。スポーツ選手にはエージェントがついているけれど、バレエにはそれがない。やったことがないことを始めるのはとても怖いもの。一人きりでそんな思いをする必要はないと思う。みんなが助けてくれるようなチームを構築することで、若いダンサーが道を間違えることなく進めるシステム、チームをつくっていきたい。
バレエは常に誰かが誰かのポジションを狙っているような境遇にある。誰かが怪我をしたらデビューできる、というようなね。つねに競争なんだ。だから喜びや聴衆のためという大切なものが置き去りになってしまう。 若いダンサーの中には、紆余曲折してそのまま引退してしまう人もいっぱいいる。だからエージェントや広報や
収入に関しても交渉してくれる人がいるチームがあれば、ダンサーは演技だけに集中できる。航空券やホテルのブッキングなど、雑務に邪魔されずにダンスだけに集中できる環境にしたい。だから僕らはダンサーを支援する“プロジェクト・ポルーニン”という組織をつくったんだ。資金提供者や法律家が協力してくれたおかげで、取締役会を作って組織を拡大できた。これからファションや映画や音楽といった他の分野とダンサーをつなぐ役目もする。ダンサー全員に参加してほしいと思っている。僕らの旅は始まったばかりなんだ。



――『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』はあなたの人生のターニングポイントを描いていますね。ロンドンにバレエを学びに行って、ロイヤル・バレエを辞めて、ロシアに移り住んで…。そういった決断で後悔されていることはありますか?
だいたい僕は後悔をしない人間なんだ。良くても悪くても、あらゆることを楽しんでいる。ただ、もし可能だったのなら、あんな風に壊すんじゃなくて、つくり上げられればよかったなって。誰かアドバイザーや良き指導者がいたら、違ったのかもしれない。あれは僕の僕だけの考えだったんだ。壊さずにやれたらよかったと思うよ。

――映画で描かれているように、多くの練習をして、バレエに人生を捧げて、世界有数のダンサーになったわけですが、そこにたどり着いた先では「次は何をする?」ということになりますよね。いまもそんな気持ちですか?
自分の心に正直になった時、出てきたのがアーティストになりたいってことだった。自分自身に「僕はダンサーじゃない。僕は俳優じゃない」と言った途端、自由になれて何でもできるようになったんだ。自分を駆り立てないで、何も怖がらないで、「時間がない」とか、「あれとかこれをやらない」なんて言わずにね。アーティストとして、選択権は自分にあるんだ。だからやりたいことをやる自由が生まれる。一日中踊ることもできるし、映画に出たり、振付をしたり、またいろんな写真家とファッションの写真を撮ったり、別のアーティストと仕事をしたりね。途方に暮れることはない。別のレベルに行くんだよ。何でも吸収するんだ。自分を閉じち
ゃダメ。何でも試さないとね。僕はまた子どもになったような気分なんだ。アーティストは子供なんだ。6才児の気分かな。

写真(c)Koji Aramaki


■ポルーニン写真集&写真展

映画の公開を記念して、セルゲイ・ポルーニン写真集「The Beginning of a Journey: Project Polunin」(写真:ハービー・山口/パルコ出版)を刊行。合わせて7月15日(土)から 7月23日(日)まで、東京渋谷 GALLERY X BY PARCO で写真展が開催。




■ニュースINDEX 2017

●セルゲイ・ポルーニン来日公式インタビュー


●フランス映画祭2017
●フランス映画祭2017 オープニング・セレモニー
●カンヌ映画祭2017
●カンヌレポート2017  PART1
●カンヌレポート2017 PART2
●カンヌレポート2017 PART3
●カンヌレポート2017 PART4(完)
●セルゲイ・ポルーニン来日!

●エレノア・コッポラ×ダイアン・レイン来日


■エッセイ&コラムINDEX 2017

●エッセイ『フィフティ・シェイズ・ダーカー』
●コラム「70回を数えた“カンヌ”の魅力とは」



  映画ファンのための映画サイト
   シネマカルチャーdigital

Powerd by Contrescarpe(1998-2006 Cinema-joho.com/2017- CinemaCulture)
Copyright(c)Contrescarpe/CinemaCulture.All rights
reserved.
info@cinemaculture.tokyo